投稿日時 2012-03-22 23:12:57 投稿者 賀茂史女 このユーザのマイページへ お気に入りユーザ登録 |
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大鏡より 帥殿の、南の院にて、人々集めて弓あそばししに、この殿渡らせ給へれば、 思ひかけずあやしと、中の関白殿おぼし驚きて、 いみじう癘応し申させ給うて、下咢におはしませど、前に立て奉りて、 まづ射させ奉らせ給ひけるに、帥殿の矢数いま二つ劣り給ひぬ。 中の関白殿、また、御前に候ふ人々も、「いまふたたび延べさせ給へ。」と申して、延べさせ給ひけるを、 やすからずおぼしなりて、「さらば、延べさせ給へ。」と仰せられて、 また射させ給ふとて、仰せらるるやう、「道長が家より、帝・后立ち給ふべきものならば、この矢当たれ。」と仰せらるるに、 同じものを、中心には当たるものかは。 次に、帥殿射給ふに、いみじう臆し給ひて、御手もわななくけにや、的のあたりにだに近く寄らず、 無辺世界を射給へるに、関白殿、色青くなりぬ。 また入道殿射給ふとて、「摂政・関白すべきものならば、この矢当たれ。」と仰せらるるに、 初めの同じやうに、的の破るばかり、同じところに射させ給ひつ。 癘応し、もてはやし聞こえさせ給ひつる興もさめて、こと苦うなりぬ。 父大臣、帥殿に、「何か射る。な射そ、な射そ。」と制し給ひて、ことさめにけり。 帥殿 藤原伊周(道隆の長男、道長の甥) 中の関白殿 藤原道隆(道長の兄) 入道殿 藤原道長 |
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